生存報告に代えて

ブログ絶賛休止中の身であり、また夏もすっかり遠くなってしまい
出遅れ感は否めませんが、めげずにすいーとポテトさんが企画された
こちらの『4コマ漫画ナツ100』に参加させていただきたいと思います。


公式ルールに加えて、自分ルールとして
「ひとりの作家さんにつき一作品」を課してみました。
その自分ルールとひとつの作品につき数行程度の紹介文を書いていたら
作品100個は果てしなく高いハードルになってしまいました…。


というわけで、『4コマ漫画ナツ100(−だいたい70)』として
この企画をもって今回の生存報告に代えさせていただきます。


小笠原朋子『さくらハイツ102』

おそらく一番単行本を買ったタイトルの多い作家さんではないかと。
『せんせいとわたし』『悪の生徒会長』など
他にもここで挙げたい作品がいくつかありますが、ひとつに絞るならこれを。
この作家さんの漫画に共通するのは、スッキリと見やすく
明るい絵柄で表現されるシンプルで居心地良さそうな作品世界。
加えてこの作品には普段着テイストでじわじわ進む
いい湯加減のラブコメがありました。
この連載が終わったときはハッピーエンドなのにショックだったなぁ…。


ひらのあゆ『星のズンダコタ』

『ぱふ』が置いてある図書館にこの作品が載ってるページを
せっせとコピーしに行っていたのも懐かしい思い出です。
まんがタイム(だったかな?)にこのひとの新連載を告げる予告を
見つけた時は小躍りしたものでした。「編集さんGJ!」と。
名作『ラディカル・ホスピタル』もあるんですが、思い入れの大きさでこちらを。


おーはしるい『会計チーフはゆ〜うつ』

自分にとって長らくラブリーの象徴だった作品。
くっつきそうでくっつかないチーフと中山のもどかしい関係や
大崎と沼ちゃんを加えた賑々しい仲の良さが見ていてとても楽しかったです。
あの世界に自分も混ざりたいと思うほど。


秋吉由美子『まつのべっ!』

先が読めない着地点の見えない波乱の展開に綺麗なハッピーエンド。
連載中は気持ちよくジェットコースターに乗っていました。
掲載誌を何度か移りつつもなんとか大団円にこぎつけて
連載終了後しばらくして単行本化した経緯も
この作品のドラマティックな印象を濃くしました。


千葉なおこ『OLパラダイス』

心置きなく大笑いできる4コマのひとつでありました。
ギャグの気っぷの良さというか、何かを吹っ切ったような勢いは
爽快感すらありました。また戻ってきてくれないかなあ…。


蕃納葱教艦ASTRO

こちらは痒いところにキッチリ手を届かせているギャグというか
そのシャープさ、サジ加減、そして巧さに舌を巻いた作品でした。
連載が進むごとにキャラの頭身が上がっていく
珍しいタイプの4コマでもありました。
復帰を心よりお待ちしております。


海藍トリコロ

ジャンボの新人レースで初めてこのひとの作品を見たときは
ひとつの時代の幕開けを感じさせるその絵柄に強烈なインパクトを受けました。
掲載を重ねるごとに磨かれていく着眼点のユニークさやオチの切れ味の鋭さ。
4コマの新しいジャンルを模索していた当時のまんがタイムきらら
頭角を現していくその過程を見ていても
次世代のスターが誕生しつつある実感をひしひしと感じたものでした。


立川志加吾『風とマンダラ』

私を落語の世界へと誘った作品です。
「金は無いけどヒマはある、明日は見えぬが夢がある」若者たちの
笑いをそこかしこに散りばめた群像劇としても面白く読めました。
しかもノンフィクションでみんな実在してますし。


ふじのはるか『むきたまごビューティー

派遣社員松島喜久治』ではいけすかないキャラだったタミーの性格が
どんどんほぐれていく様子とバーバラの清濁併せ呑んだ可愛さが
私をこの作品世界にぐいっと引き込んでいきました。
「作者の考えが見える」4コマを描く作家さんでまず思い浮かぶのが
前述のひらのあゆと、このひとです。
そして絵柄のラフな感じがなんか好きなんですよね。


小坂俊史『中央モノローグ線』

4コマ王子と呼ばれて久しい作者の今までとはちょっと毛色を異にした作品。
4コマ目のオチにも侘び寂びというかどこか切ない余韻を含ませていて
ほんのり哀愁を感じさせます。この心地良くビターな読後感に加えて
中央線沿線の街をテーマにしているのも個人的に非常にポイントが高いのです。
単行本を出してもらわないと困る作品。


重野なおき『GoodMorningティーチャー』

上記の小坂俊史と共に現在の4コマ界を背負って立つ
“4コマまんが道”のもう一方、重野なおき出世作
時にアツく時に切なく、明るく楽しく面白く。
子供に安心して薦められる4コマです。健康感あふれる4コマを描かせたら
おそらくこの作家さんの右に出るひとはいないのではと。


秋月りすOL進化論

現在の4コマの王道にして中興の祖(と個人的に思っています)。
私が4コマ誌を手に取るきっかけはこのひとの『かしましハウス』でした。
優れた洞察力とバランス感覚でおよそ20年もの間、第一線において
週刊連載を続けてきたまさに4コマ界のサザンオールスターズ


松田円『サクラ町さいず』

何があっても揺るぎのない、そののほほんとした朗らかさに
大きな信頼を持って読める作品です。
おそらく自分の中で現在「とりあえず手に取る4コマ」第一位。
実は結構シリアスな設定にも関わらず、そんなことは微塵も感じさせない
コミカルな明るさに心魅かれます。がんばれひろえ。


荒井チェリー三者三葉

いつ読んでも一定水準以上に面白く、どこに載ってても期待を持って読める
その安定感はピカイチ。個人的に山Gの絡む回が大好きです。
全力でその優れた能力を無駄遣いする空回りっぷりがなんとも。
またタイム系にも顔を出してほしいのですが。


矢直ちなみ『乙姫各駅散歩』

ちょっと古風で優しい絵柄に、爽やかな読後感を残す作風。
個人的にイチ押しの新人さんなのですが、どうやら他でもあちこちで
高評価を受けているようで嬉しい限りです。
こういう作家さんがどんどん注目されていく今の流れは
とてもいいなあと思います。


猫原ねんず『カンヅメコーポのチリー』

個人的にイチ押しの新人さんその2です。
長いゲスト掲載の末、ついに連載を勝ち取り大喜びしました。
華を感じる絵と肩のこらない雰囲気が好み。


・ワカマツアツト『ひとみとコットン』

個人的にイチ押しの新人さんその3です。
健康的に明るく温かくほのぼのとした作風は4コマにうってつけだと思います。
新人とは思えないほどの安定感、安心感を感じます。


宮原るり恋愛ラボ

このひとの描くツッコミキャラの斧のような切れ味と畳み掛けるように
コマを進める怒涛のリズムはおそらくオンリーワンのものではないかと。
力ずくで作品世界に巻き込まれていく快感があります。
きっとこれからどんどんのして行く作家さんなんだろうなあ。


みずしな孝之幕張サボテンキャンパス

ちょうど同じ時代に大学生やってました。
ユルくてヌルい大学生活。この作品を読みながら
同意したり憧れたり気づかされたり。そしてもちろん笑ったり。
ひとつの理想像であり、また自分と重ねあわせることの多い4コマでした。
今でもこれを読むと当時のことがブワっと脳裏に甦ります。


荻野眞弓たまのこしかけ

現在、単行本化をお待ちしている作品No.1です。
人生の踊り場に差し掛かり、仕事や結婚その他もろもろと向き合い直して
「さて、これからどうしよっかなー」な様子をいい按配に描いています。
やっぱり自分と同世代を描いてるのも惹かれる大きな要因なんでしょうね。


岩崎つばさ30GIRL.com

徹底してコミカル・ラディカル・リズミカル。
とっつきやすい絵も相まって、何も考えずにスコーンと
明るく楽しくテキパキ読める作品です。
実はこれってかなり凄いことなんじゃないかと。


こうの史代『ぴっぴら帳』

郷愁あふれる柔らかい絵柄と地に足の着いた作風。
それでいて意外と気兼ねのないツッコミやくすぐり。
ホッと心休まるこうのワールドを存分に味わえます。


井上トモコ『あかるい夫婦計画』

ものを見る角度の多彩さや視点の鋭さ、毒の包み方など
秋月りすの系譜を継げる正統後継者なのでは、と密かににらんでいます。
オチに思わず「なるほど!」と頷かされることも多いですし。
息長くやってもらいたい作家さんのひとりです。


奥谷かひろ『花咲きKomachi-Girls』

一時期非常にハマってましたその1。
色とりどりなキャラと作品世界のスラップスティックな雰囲気が
このひとの賑やかな作風と相まってとても楽しげでありました。
ザ・学園生活とでもいうべきか。
できれば4コマ誌にもっと定着してもらいたかった作家さんのひとりです。


こいずみまり『ジンクホワイト』

一時期非常にハマってましたその2。
こちらは流れるような淡々としたコマ運びと少ない登場人物で話が進む
閉じた世界観が妙に心地よくて、話の展開もさることながら
作品全体を通じて漂う静寂な雰囲気を噛み締めるように味わっていました。


カラスヤサトシカラスヤサトシ

飾らない素の自分の徹底的な肯定。
「どや!妙やろ!おもろいやろ! でも俺は変わらんからな!!」
という強固な意志を感じます。そしてその強さに勇気をもらうのです。
「自分もこれでいいんだよね」と。
そしてT田さんネタにも元気付けられています。
「まだ大丈夫! 俺まだまだ全然大丈夫!!」と。


吉田戦車伝染るんです。

4コマという括りを越えて、漫画全体を通して自分にとって
ひとつの大きなポイントになった作品。
「これで笑ってもいいんだ」「こういう笑いを用意してくれるひとがいるんだ」と
なんだか凄く嬉しくなったのを覚えています。


藤凪かおる『パニクリぐらし☆』

彼女になる前に既に家族の一員と化している長瀬さんと
彼女を囲む楠家のアットホームさがいいのです。
ブコメとホームコメディが絶妙な比率でブレンドされています。


桜玉吉読もう!コミックビーム

私の中における日常報告4コマのひとつの頂点であります
(このジャンルの作品が他にどれだけあるかは定かではありませんが)。
4コマの枠線の向こうに確かな奥行きを感じます。
ある意味、これも名作『漫玉日記』シリーズの一形態なのでしょうか。


大橋ツヨシ『プー一族』

漂うような、あてどもないような毎日。
それでいて自分の根っこはそれなりに掴んでいる。
それぞれがそれぞれの方向を進みだすまでの有意義に無為な日常を
若者5人のダベリつつ進む会話を通じて描いた4コマ。
一見のんきでありながら、どこかに薄っすらと見え隠れする不安や憂い、
そして一人またひとりと自らの道を見定めて歩みだすその様子の
晴れやかさと切なさが心に沁みる作品でした。


桑原ひひひきつねさんに化かされたい!』

日常をゆるゆると、それでいてギャグは濃ゆくキビキビと。
ほぼ固定された舞台とメンツで紡ぎ出された4コマは
小さな世界ならではの気の置けない雰囲気や居心地の良さに満ちています。
まるで学生時代の溜まり場にいるような。
繊細な描線を効果的に残したラフな絵も個人的に好みです。



ちなみに順番はほぼ思いついた順です。
お読みくださった皆さま、お疲れさまでした。