ヒヤヒヤ多摩サイ(4/5)

…と思ったら、今度はグラウンドの密集地帯。
河川敷とグラウンドの境目には金網の柵が延々と続いていました。
まるで多摩サイから脱出するのを阻止するかのように。


「うわ、漫画みたいだな。この間の悪さ」


行けども行けども続くばかりの金網。
これ以上スピードを出そうにも、無印良品の変則ギヤ無し20インチの自転車では
いかんともしがたく、普通のママチャリにもスイスイ抜かれる始末。
いかにもカミナリが落ちそうな鉄塔も近くに鎮座しています。


ウンザリとピリピリとヒヤヒヤが混じり合っていた感情に
グラグラ気持ちを揺さぶられていたその時、


辺りが一瞬明るくなったと思う間も無く、


『ピシャグワラドシャ―――ン!!』


間近で花火を見ていたような周囲に響き轟く重低音に、
乾いたような、やけにかさついた余韻の音。


「これはきっとすぐそこに…」


もうヘロヘロです。涙目です。足が三角に回転しています。
私を追い抜いていく自転車からもまるで遠慮が感じられません。
目は血眼になって脱出口を探しています。
心の中で唱える言葉も
「どうかどうかどうかお願いしますお願いします」に変わっています。